バランスの良い食事は、厚労省推奨の「食事バランスガイド」の比率ではないのですか?

吉川朋孝

厚生労働省が推奨している“食事バランスガイド”は、炭水化物60%たんぱく質20%脂質20%ですが、これは国民にどんな食事を取っているかをアンケート調査して出てきた平均値です。つまり、この比率が健康に良いですよってことではなく、この比率で皆さん食べてますよっていう、ただのアンケート結果なので、科学的根拠ゼロです。

では、何を持って“バランスが良い”と言うべきなのでしょうか。

ひとつだけハッキリしているのは、人体は生理学的に見ても糖質を食事から摂取する必要は1gもないってことです。

江部康二先生のブログから

国際食事エネルギーコンサルテーショングループの報告では「炭水化物(この場合は糖質とほぼ同義)の理論的な最小必要量はゼロである」(☆)と明記されています。

だから、私たちヒトにとって“バランスの良い”三大栄養の比率は何?ではなく、人体にとって必要な栄養素と不必要な栄養素は何?ってことの方が重要なのです。

では、三大栄養素の特徴を見ていきましょう

血糖値 体の材料
たんぱく質 上げない
※1
なる
(筋肉・皮膚・髪の毛・骨など)
脂質 上げない なる
(細胞膜・ホルモン生成など)
糖質 上げる
※2
ならない
(必要なブドウ糖は作られる)

これを見てわかるとおり、糖質は体の材料には一切ならず、エネルギーにしかならないのです。よく「糖質は重要なエネルギー源だから、全く摂らないのは良くない。ある程度は必要だ」と聞きますが、上に書いてあるとおり、糖質は理論的にも最小必要量はゼロなのです。1gも必要ないのです。

唯一、赤血球はミトコンドリアを持たないため、ブドウ糖しか使えませんが、そういった体内で最低限必要なブドウ糖は、糖新生によって肝臓で作られるので問題ありません。

一方、たんぱく質も脂質も体の材料としてだけでなく、しっかりとエネルギーにもなります。端的に言えば、糖質はエネルギーにしかなれないということです。どれが必要で、どれが不必要かはこれでわかりますね。

さらに人類の歴史で考えるとわかりやすい

人類700万年の中で糖質を摂りだすようになったのは、農耕が始まった頃のたった1万年。精製された炭水化物を今のように多く摂るようになったので言えば、200〜300年ほどしかありません。

ヒトは長い時間をかけて進化をしてきたわけですが、身体の仕組みのグランドデザインは狩猟採集民だった頃の糖質制限生活によって作られたものです。たった1万年で根本的なシステムは変わりません。これは生理学的に見ても変わっていないことがおわかりになると思います。

また、狩猟採集民だった頃の699万年で糖質が摂れたのは、わずかに摂れる木の実や根、果物などですが、果物も今と比べものにならないほど糖度が低いものです。人は頭の中でバランスを取りたがるので、糖質を全く摂らないのは「極端でバランスが悪い」と思い込みがちです。

大事なのは必要な物と不必要な物という、根本的な部分を理解する必要があります。「何でもバランスが大事」とついつい言ってしまうのは、答えが明確でないときに出やすい言葉だと個人的には思っています(笑)

POINT
  1. 食事バランスガイドはただのアンケート結果で、科学的根拠ゼロ
  2. 糖質は理論的にみても1gも必要ない
  3. 体内で必要なブドウ糖は糖新生によって肝臓で作られる

※1 たんぱく質に含まれるロイシン、リジン、アルギニンがインスリンをわずかに分泌させますが、拮抗ホルモンのグルカゴンが血糖値を上げて相殺させますので、インスリンが正常作用している人は血糖値は上がりません。
※2 0カロリーの人工甘味料は、糖質に分類されますが、血糖値は上げません。

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